支え続けてくれる思い出

2024/11/13


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  染料
液体に溶けます。友禅染、染め物に使われます。



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  顔料
粒子は溶けずに、膠やオイルなどをバインダーとして定着させます。日本画にも西洋画にも使われます。



上の染料色見本は、わたくしが二十二歳の時に、二ヶ月間だけお世話になった京都の友禅染工房で作ったもの。今も大切な宝物です♪

この工房をわたくしはたったの2ヶ月でクビになるわけですが、こんなにも納得のいくクビは、まぁ世間でもどれだけあるのだろうか・・・と思います(笑)

二ヶ月経った日、先生にお部屋に呼ばれ、クビを言い渡されたのですが、こちらはすでに心の準備はできていて「ですよねぇ☆」と(笑)
あ、そうそう・・・この最後の出勤日の朝に、かわいそうにも首が切れてしまった小さな蛇を見たのです。何だか偶然とは思えませんでした。「今日クビを言われるだろうな」などと考えながら駅へ向かっておりましたから。(一生の内にはこのようなサインが実は何度かあるものです)

で、クビになった理由ですが
わたくし根っからの顔料タイプだったようで・・・あろうことか染料を何回か重ね塗りして(これは顔料で奥行きや深みを出す時の使い方で「モナ・リザ」など油彩画に多く見られる、あれです)自己満足にも勝手に陰影をつけて、せっかくの澄んだ染料の色を汚したり(一反丸々)、覚えが悪過ぎて、引き染めのための張り木すら上手くセットできなかったりの有様で・・・☆
そりゃあ、戦力外通告されるのは自分でも解りましたよ。まったくお役に立てていないのですから。(勝手な重ね塗りでご迷惑までかけて)逆に三日でクビにならなかったのが先生方の(ご家族経営でしたので)温情でしょう。(笑)



と言うわけで、今は好きに、心ゆくまで、顔料で絵を美しく汚しまくる日々です。
着物は汚すわけにはまいりません⭐︎(上記の通り、前科あり)



けれども決して忘れない・・・あの、宝物のような二ヶ月間を・・・
あの、二ヶ月間に先生方に言っていただいた、温かいお言葉の数々を・・・

「一度濁してしまった色をまた綺麗に戻すのは難しい」(何だか人生のようですね)
「何で疲れる姿勢で仕事する、長く続ける為には自分が疲れないやり方を考えなさい」
「人様に信用されるようになるには、それなりに時間がかかるもんやで」
「トイレ掃除の当番は先輩後輩なく平等だから新米だからと気を使わんでええ」
「工房のみんなと仲良くやれてるか?元気でやってるか?」
「遅くまでご苦労さん、帰りの電車は大丈夫か?」
「この色とこの色、どっちが綺麗や思う?まぁ、あんたが自分なりに考えた上での失敗やったらええよ。もうちょっとやってみい」
「あんたの性格は好きやねん。けど業界的に余裕のある時代やったら成長をゆっくり待ってあげれたやろうけど・・・ごめんなぁ」(先生は優しく涙をこぼしながらそう言って下さいました)
「この仕事より楽しい仕事は世の中にいっぱいあるからな、あんたやったら見つけられる思うえ」(なんという…温かくて、思い遣りのあるクビの言い渡し方でございましょうか・・・これが送りだして下さるお言葉でした)

・・・これを書いていて、今、思い出しても、涙がとまりません。先生方だけでなく、当時の先輩方も皆さんとても優しかったです。

常にラジオが流れていて、日当たりの良い、居心地の良い工房。夕方には豆腐販売のラッパが聞こえてくる・・・二つの工房それぞれに可愛いワンちゃんと猫ちゃんがいて、癒されました。
でも何よりも、心のこもった手を使う職人の方々に、心底癒され、人間としての基礎を育てていただきました。

この二ヶ月間の思い出が、その後どれほどの困難が訪れても、今もずっとわたくしを支えてくれています。

今や昔工房でお世話になった方の誰一人として、わたくしのことなど、覚えてはおられないでしょう。
けれどわたくしにとっては、まことにかけがえのない時間でございました。
まるで、昨日のことのように思い出せます♪

 
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